ゴッホ展

ゴッホ展の展示作品の中で、1点だけ、わざわざ白いパネルを用意して、その上に作品を展示しているものがあります。それが「マルメロ、レモン、梨、葡萄　1887年」です。

ゴッホは出来上がった作品で最もよくできたものにだけ額装を施したそうです。
そして現在、この「マルメロ、レモン、梨、葡萄」だけが当時のゴッホが額装したオリジナルのままで残っている唯一の物だそうです。しかも、額縁にまで黄色の絵の具が本人によって塗られていて、額まで含めて黄色の作品「黄色い静物」(ポールゴーギャン)になっています。額縁まで作品　という観点から、他の作品とは区別して白いパネル上に展示しているのでしょう。ゴッホも額縁を額縁として意識しているというよりは、額縁を作品の一部に溶け込ませるような意味合いでペイントしているように思えます。

額縁は宿命として、作品の所有者が点々とする度にその調度品にあわせて額装が取り替えられている事が多い様です。額縁屋からみるとそれは正当な事で、作品とそれを飾る空間の中間でどちらにも調和することを使命とされていからです。

この「マルメロ、レモン、梨、葡萄」の作品は額縁までがゴッホの作品であり、会場に取付けられている白いパネルがこの場の額縁の役割をはたしているといえます。